診療録

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シリコンバッグ豊胸は乳がんやリンパ腫の原因になるの?

第55録
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闘病中の小林麻央さんやテレビに復帰した北斗晶さんなどでも話題の乳がん。その影響もあってか、豊胸シリコンバッグを入れているゲストから、「入れたままだと乳がんのリスクが高まりますか?」「何か病気の原因になりませんか?」とご相談を受ける機会が増えています。そこで今回は診療とは少し離れて、シリコンバッグ豊胸をはじめとする豊胸術と病気のリスクについてまとめてみました。

シリコンバッグ豊胸は乳がんの直接的な原因ではない。でも・・・

豊胸 乳がん検診

結論から言うと、現時点でシリコンバッグ豊胸が乳がんの発生を高めるという研究結果はありません。乳がんは乳腺で起こる病気ですが、シリコンバッグ豊胸は乳腺を傷つけずに脂肪層や大胸筋下などに挿入するもの。乳腺には直接作用しないので、授乳に影響がないのと同様、乳がんの原因となることは考えにくいと言えます。
しかし気になる研究結果もあります。美容目的で豊胸手術を受けた女性の乳がん死亡率は、通常より高いという論文の存在です(イギリス医師会ジャーナルで発表された論文「Breast cancer detection and survival among women with cosmetic breast implants: systematic review and meta-analysis of observational studies」など)。これは豊胸手術が直接的な原因というわけではありません。シリコンバッグ(または生理食塩水バッグ)豊胸の場合、マンモグラフィーを始めとする主要な乳がん検査が「受けられない(断られる)」、あるいはマンモグラフィーやエコー、MRIに「異物とはっきり映ってしまう恥ずかしさ」から検査を避け、乳がんが初期のうちに発見できないことに関連すると考えられます。また、検査できたとしても異物の陰に隠れた乳がんを見落とす可能性も……。
乳がんは早期発見し適切な治療を受けられれば、9割は治癒が期待できる病気と言われています。豊胸シリコンバッグを入れていると早期発見ができず、症状が進んでから治療に入るために、命を救えないケースが出ているとのではないかと考えられるのです。

シリコンバッグ豊胸との関連が指摘「未分化大細胞リンパ腫」

非常にレアなケースではありますが、シリコンバッグ(または生理食塩水バッグ)豊胸に関連の可能性があると言われ、現在調査中なのが「未分化大細胞リンパ腫(ALCL)と呼ばれるリンパ腫の一種です。2011年、アメリカの厚生労働省に当たるFDAが「大変まれではあるが、豊胸シリコンバッグや生理食塩水バッグで豊胸術や乳房再建手術を受けた場合、ALCLを発生する可能性がある」と発表しました。ALCLそのものの発生率は1年間で約50万人に1人。しかし豊胸インプラントを入れた人はその3倍にあたる約50万人に3人といわれ、現在も因果関係が調査されています。

ALCLは豊胸シリコンバッグの入れ替え手術で判明することが多い

診断のきっかけとして最も多いのは、痛みやしこり、腫れなどの異常を訴えた女性が豊胸シリコンバッグや生理食塩水バッグの入れ替え手術を受けた時。被膜とそれらの間にたまった漿液(水)や瘢痕(しこり)の組織を調べると、まれにALCLと判明することがあるそうです。FDAはクリニックに対し、患者へのALCLのリスクの説明や情報開示を求めていますが、普段から痛みや左右差、しこりを感じた時はすぐに検査することをおすすめします。

脂肪注入による豊胸手術は「乳がんへの影響はなし」

豊胸 乳がん

一方、コンデンスリッチ豊胸をはじめとする脂肪注入豊胸はどうでしょうか?
2010年に発表されたDr. Rigottiの論文では、脂肪注入によって乳房再建をした1000例を調査したところ、乳がん再発への影響はなかったと結論付けられました。また2016年、形成外科学会雑誌「PRS」でDr. Kronowitzらが発表した論文によると、①乳がん術後に脂肪注入したグループ、②乳がん術後に脂肪注入していないグループ、③乳がんにかかった経験がなく脂肪注入したグループを長期間の調査で比較した結果、乳がんを発症する割合には差がありませんでした。つまり、「脂肪注入豊胸と乳がん発症との関連性はない」と考えられます。

脂肪注入豊胸は「乳がん検査が受けられるメリット」が大きい

上記の結果は、脂肪注入豊胸がマンモグラフィー、エコー、MRIいずれの検査も問題なく受けることができる豊胸術であることも関係しています。第19録「豊胸後の乳がん検診リアル体験談! シリコンバッグの不安(後編)」でも紹介した、実際に当院でコンデンスリッチ豊胸を受けた後、乳がん検査を受けた人の体験談もご覧ください。この方は、様々な医療機関で乳がん検診を受けたそうですが、「脂肪注入による豊胸歴がある」と申告後でも検診を断られたことはないそうです。

シリコンバッグ豊胸の健康リスクを理解したうえで選択を

シリコンバッグ豊胸はALCLに限らず、破損による炎症などさまざまなリスクをはらんでいます。それは技術があれば回避できるものではなく、「異物を入れる」という施術法そのものに由来するので、一旦入れてしまえば抜去(摘出)まで不安がつきまといます。ヒアルロン酸やアクアフィリング(アクアリフト)などの注入豊胸にも、異常が起こりやすいことが報告されています。
しこりや炎症などを、ドクターの技術で回避できるのは自分の脂肪による注入豊胸だけです。将来のリスクを理解した上で、ご自身に一番合った選択肢を選びましょう。

知恵まとめ
  • シリコンバッグ豊胸が乳がんの発症原因となる研究結果はない
  • ただし乳がん検査ができず、早期発見しにくいことから死亡率は高いとする論文も
  • 脂肪注入豊胸は乳がんとの関連性はない。乳がん検査も受診可能
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